THE BOYS&GIRLS(通称ボイガル)のライブを見るために札幌遠征した、ただのファンによる2023年6月10日~12日の日記。前回投稿したボイガル日記から約2ヶ月ぶりの札幌。また新しい体験をした。
《1日目》2023年6月10日土曜日
今回の札幌遠征のお目当ては、6月11日に札幌KLUB COUNTER ACTIONで開催されるTHE BOYS&GIRLSのワンマンライブだ。週休日だったので、10日から札幌に行くことにした。成田空港から離陸。地上から見上げたときには曇り空だったが、雲の上はすっきりとした青が広がっていた。
札幌駅から一歩踏み出した時、「お、札幌だな」と思った。前回来たときは、ずっと来たかった札幌にやっと来れた!という感動があって、もはや涙目だったのだが、今回はそこまで心は動かなかった。それが嬉しかった。
北海道に住む友人と会う約束があったので、荷物を持ったまま大通公園まで歩いた。この日はよさこい祭りが行われていて、衣装に身を包んだ集団がそこかしこにいた。前回来たときはガラガラだった大通公園が、随分と華やかになっていたから、なんだか面白かった。
友人と別れた後、宿泊するゲストハウスへ向かった。そこは1階がBarで、2階が寝室になっており、スタッフさんがシャワーやキッチンの場所を教えてくれた。キッチンには机と椅子があり、くつろげるような空間になっていたのだが、なんとそこにアコースティックギターが置いてあった。筆者の目はそのギターに釘付けになった。
前回の遠征時に楽器経験0だったが、札幌でギターを買った。筆者には、ギターを弾けるようになったら、札幌にそのギターをまた持ってきて、札幌の空気に包まれながらボイガルの曲を弾きたいという夢がある。1年後を目安にしているので、今回はギターを持ってこなかった。のだが、なぜか目の前にギターがある。どういうことだ!天才か!
札幌でボイガルを弾くチャンス到来!と思ったが、「そのギターって弾いてもいいですか?」が聞けなかった。筆者のギター歴は約2ヶ月だ。基本コードは覚えたが、とてもスラスラと弾けるようなレベルではない。普通に恥ずかしかった。
その後、寝室を案内され、最後に「案内は以上です。何か質問はありますか?」と聞かれた。後悔する気がしたから、思い切って聞いた。「あの!キッチンのところにあったギターって触ってもいいやつですか?」
その言葉を聞いた瞬間、スタッフさんの表情がパッと明るくなった。
「もちろんです!音楽されてる方ですか?!」
うおー!期待されてしまった!でも全然違う!全然弾けない!ごめーーーーん!!!!!と思いながら、「いえ!練習してるとこです!全然!始めたてです…」と小声で俯きながら答えたら、「そうなんですね」と笑って、自由に使ってくださいねと言ってくれた。優しい。そして嬉しい。
荷物を整理しながら「どうする?弾くか?」とぐるぐる考えた。夜になればなるほど人が増えてくるだろうから、弾くなら早めにした方が良い。チューナーを持っていないが、アプリで代用できそうだ。コードを書いたノートも持ってきていないが、スマホで調べればいい。17時半にキッチンに行って誰もいなかったら弾こう、と腹を括った。
スマホのホーム画面に17:30の表示。キッチンに突撃。若い男性2人がキッチンで談笑している。人、いた。即効で寝室に帰還。…なにしてんだか(笑)筆者の勇気は儚く散った。
深く息を吸って、外に出かけた。ハードオフ中の島店でカポを購入し、喫茶店で晩ごはんを食べた。ゲストハウスに戻ると、1階のBarが繁盛していて人がたくさんいた。
寝室に戻り、こりゃ今日は弾けないな~と考えながら、気がつけば寝ていた。実はこの日、悩みすぎて一睡もできないまま札幌に来ていた。横たわったらそこはもう夢の中だ。
《2日目》2023年6月11日日曜日
朝起きて、ゲストハウスに荷物を置いたまま、豊平川へ向かった。コンビニでサンドイッチとコーヒー牛乳を買い、川を眺めながらひとりでピクニックをした。6月の札幌はTシャツ1枚で過ごせる、気持ちの良い気候だった。最高オブ最高。
ゲストハウスに戻ると、1階がcafeになっていた。コーヒーとトーストの良い香り。お客さんはまばらで、宿泊者用のキッチンには誰もいなかった。日を跨いだが、再びギターチャンス到来だ。
弾いた後、すぐにチェックアウトできるように荷物は先にまとめておいた。これで恥ずかしくなった時はすぐに逃げられる(笑)
ギターを構え、アプリを使ってチューニングしようとしたが、使い方がよく分からなかったので辞めた。それっぽい音は鳴っていたので、チューニングせずに演奏開始。他人のギターを触るのも、家族以外の人がいる空間で音を鳴らすのも初めてだったから、緊張して指が上手く動かなかった。
メル、ライク・ア・ローリング・ソング、パレードは続く、24・・・
コードチェンジが遅すぎてグダグダだったが、自分は今、札幌でボイガルを弾いているのだと思うと顔が綻んだ。なんだ、この異常な嬉しさは。ずっと面白かったし、ずっとワクワクしていた。
記念にすべてスマホで録音したのだが、海外のお客さんの何語か分からない会話やカフェの厨房から聞こえる食器の音とかも入っていて、それがなんだか良いかんじだった。筆者の演奏は、何の曲を弾いているのか自分でも分からないくらいの拙さだったが、それで良かった。
約1年後、ちゃんと自分のギターを持ってきて札幌に弾きにくるときには、もっと上手くなっているだろう。物語は始まったばかりだ。今回は札幌でボイガルを弾けたことがとにかく嬉しかった。
チェックアウト後は、藻岩山に向かった。ライブ前に山登りに行くというなんともハードなスケジュールだ(笑)YouTubeに北海道アンダースカイという番組にシンゴさんが出ていた回がアップされており、藻岩山に登って曲を書くという内容だったから、一度登ってみたかったのだ。
藻岩山でできあがった曲は、『愛葉集』という弾き語りCDに収録されている『思い馳せながら』という曲だ。藻岩山の頂上の展望台から、札幌の街を見下ろしながら、この曲を聴きたかった。
山頂の展望台に到着し、札幌の街を見下ろした。『思い馳せながら』は、「雨上がりの光と影を纏った街を見下ろすと コロコロ表情変えるくせに姿形はそのままで」という歌詞から始まる。
雲が流れて、光と影も動いて、街の表情が変わっていく様を見たかったのだが、この日は空一面が雲というかんじで、あまり動きがなかった。
でも、それも良いなと思った。同じ場所に行っても、見えるものが違って、抱ける感情も違うということが、嬉しいような気がした。
「生きてゆく 生きてゆける」とイヤホンから流れた時、鳥が3羽飛んで行った。札幌の街ばかり見ていたが、鳥や木々を見るのも良いなと視点が切り替わった。生きているものに惹かれていたい。
下山後は喫茶店で小腹を満たし、宿に荷物を預けて、先行物販に向かった。ライブハウスの前に着いたとき、東京でよく見かける顔を見かけて、ピタリと足を止めた。それは相手も同じで、あ!となり、しばらく談笑した。筆者の文章を素敵だと言ってくれた。とても嬉しかった。
連絡をとっていた友達が来たので、一緒に物販に並んだ。お互いにライブ遠征をしまくるタイプなので、どこで会っても、もはや違和感がない。TシャツのMサイズとLサイズで二人して悩みまくったのが面白かった。どっちでもいいって(笑)
その後は北海道に住む友人と合流。ボイガルのことをあまり知らない友人だが、誘ってみたら「行く!」と言ってくれた。友人はお酒を片手にいろんなバンドの話をしていたが、開場時間が近くなっていたので筆者はソワソワしていた。早くそれ飲み終わってくれ(笑)喋り出すと止まらないのが、この人の可愛らしいところである。
整列が始まり、自分の並ぶ場所を把握できたので、会いたかったフォロワーさんに一瞬声をかけに行った。夫婦で来られていて、旦那さんが写真を撮ってくれた。夫婦でボイガルを見に来るってとても素敵だ。「私もハードオフ中の島店でカポ買ってきたのー!!」と言ってきたのでめちゃくちゃ笑った。なんのお揃いですか(笑)
どのやりとりもあたたかくて、自分が悩んでいたことを忘れられるような時間だった。筆者は基本的にライブに一人で行くし、一人で行っても楽しめるライブこそ本物だと思っている。が、ライブに行くことで自然にできる人との繋がりは大切にしたい。筆者はそういう出会いが好きだ。
まもなく開場し、札幌KLUB COUNTER ACTIONの中へ。筆者は前から4列目のベース側で見ることにした。この記事はライブレポではないので詳細は記さないが、とにかく最高のライブだった。筆者は暗い気持ちも抱えながらライブを見に行ったわけだが、そのすべてを晴らしてくれるようなハッピー空間だった。
ボイガルの楽曲の一曲一曲が本当に好きだなとか、ワタナベシンゴというフロントマンのかっこよさとか、ワンマンなのにお客さんがボイガル以外の好きなアーティストのグッズを身に着けていることの面白さとか、箱への愛とか、“好き”と熱気の溢れたフロアとか、もうすべてが美しかったし、幸せだった。こんな夜があっていいのかと思うくらい、最高な時間だった。
それから、この日の筆者には、“傷”という言葉を歌詞に含んだ曲が異常に刺さった。ハッピー空間をつくる腕っぷしがあるので明るく見えるが、ボイガルの音楽は、実は傷だらけだなと思う。
「ボーイ、君はすぐ躓いて 傷に傷を重ねて 俺はそのままでも好きだぜ」「紡ごう、癒えなかった傷もそのままで」
「擦り傷をふと思い出す 夢と現実の瘡蓋 おそらくこの先もずっと俺は俺なんだろう」
すべて別の曲だが、“傷”という言葉が入っており、傷を含むこれらの歌詞からは、“そのままでいい”とか“このままだ”というメッセージを感じる。
人と関わっていれば、どうしても傷を受けてしまう場面というのは出てくるし、その傷をどう癒せばいいのかというのを筆者はずっと悩んでいた。
だからこそ、この日は傷を含む歌詞がやけに刺さった。そして、「あ、このままでもいいのかもな」と素直に思った。そう思えたのは、目の前でボロボロになって歌うワタナベシンゴがかっこよかったからだ。
『階段に座って』の歌詞みたいになってしまったが、でも、本当にそうなのだ。傷は受けない方が良いし、癒える傷は癒えた方が良いのだが、言われて嫌だった言葉、忘れられない出来事、思い出してしまう表情、そういうものがあるんなら、それはそれで持っていればいいと思った。それらを抱えたまま光ることができれば、その姿は誰かを励ます光になる。
筆者は音楽を作れないが、文章を書くことは好きだ。このただの日記も、誰かの心に届くだろうか。いつかは光になるような文章を書きたい。そんなことを思った。
これが筆者の出したひとつの結論だ。ひとつのライブでハッピーな気持ちになって、さらに悩みに対する答えまで出るなんてこと、なかなか無い。無いからこそ、来てよかったなと思った。
ライブ後は、友人と大通公園のベンチで喋り、居酒屋に移動して喋り、とにかくたくさん話した。深夜に宿に戻り、晴れやかな気持ちで眠った。
《3日目》2023年6月12日月曜日
夜17時には札幌を発つ。それまでに行きたい場所に行こうと、まずは新川通りを目指した。『階段に座って』という曲には、「新川通りを一人進む」という歌詞がある。
JR新川駅で降り、歩いて新川通りへ。途中、セイコーマートに寄っておにぎりを買い、それを食べながら歩いた。新発売の豚ニラにんにくおにぎり。めちゃくちゃ美味い。なにこれ。
新川通りのすぐ傍には琴似川が流れており、筆者は川沿いを歩いた。新緑がとても綺麗で、タンポポがたくさん咲いていた。冬になって雪が積もったら、まったく違う景色になるだろうなと想像したりもした。
『階段に座って』の新川通りは、どの季節の新川通りをイメージしているのだろうか。歌詞からは、孤独な闘いというか、冷たい風が吹いていそうな雰囲気を感じるから、筆者的には秋か冬のイメージなのだけれども。
その後は、円山公園駅に行って、「24時円山を追い越してった東西線」という歌詞を聴きながら円山の街を歩き、MVの撮影地にもなった円山のリボルバーというbarの前を通った。円山公園にも散歩しに行った。通りがかったお菓子屋さんの四角いプリンが美味しそうだった。
円山公園駅から札幌駅に戻ろうと地下鉄に乗ったが、途中の大通駅で降りた。札幌駅に着いたら、荷物をコインロッカーから取り出して、もう空港に向かうだけになってしまう。札幌を発つ前に、大通駅から札幌駅までは自分の足で歩こうと思った。この目で見れるものを見ておきたい。
そんなわけで大通駅の改札をくぐり、札幌の街へ出た。大通駅から札幌駅まで、筆者は必死に前髪を押さえながら歩いた。札幌は風が強すぎる。髪の毛はぐしゃぐしゃになるし、なんなら口に髪の毛が入ってくるし、何だよこの風!と半分怒っていた。風が強すぎて、もはやもうすぐ札幌とお別れすることになる感傷など吹き飛んだ。
だが、そんなときにイヤホンから流れてきたのは、『せーので歌うバラード』の「優しい街の風は包むだろう 君を」という歌詞。(あ、この風は鬱陶しいのではなくて、包んでくれているのか)と思うと、怒っていた自分がなんだか恥ずかしくなった。こういうことが実は結構多い。ボイガルの音楽は、なんというか、色んなものに対する視線が優しいのだ。
思えば、“風”という言葉も、ボイガルの楽曲の歌詞によく出てくる気がする。風ってもしかすると、札幌らしさの一つなのかもしれないなと思った。そう思うと、札幌で吹いている強い風が、急に愛おしく思えた。東京に戻ったら、家に着いたら、この風は吹かないのかもしれないな。
少し寂しくなったが、この風の愛おしさを知れたことが嬉しかった。こういう細かい感情も、持って帰るのだ。こういうのが楽しくて、筆者は札幌遠征を辞められる気がしない。次に来るのはツアーファイナルの札幌公演だろうか。いや、夏フェスで来てしまうような気もする。いずれにせよ、また来るし、それまではギターを練習しないとだ!
終わりに
ここまで読んでいただき、ありがとうございました。筆者のワクワクした気持ちを少しでもおすそ分けできたら幸せです。それから、ボイガルを知らないけどこの記事を読んだという方がいらっしゃいましたら、ぜひ聴いてみてほしいなと思います。
本文では、“傷”を含む歌詞を3つご紹介しました。上から順に、『ボーイ』『風花が吹いたら』『ロータリーを抜け出せ!』という曲から引用しています。良かったら聴いてみてください^^
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