2022年3月28日(月)に開催されたMOSHIFES2022。シンガーズハイとCRYAMY部分をレポートします。下北沢の小さなライブハウスで活動することの多い彼らの音楽が、zeppという大きな箱で響き渡ったこの日を記録。
もくじ
1.はじめに
2.シンガーズハイレポ
3.CRYAMYレポ
4.まとめ
□1.はじめに
筆者はただのCRYAMYファンですので、気軽に読んでいただければ幸いです。
出演キャンセルとなったKALMAのピンチヒッターとして、ライブ当日のわずか2日前にCRYAMYの出演が決定。急な日程はもちろんのこと、会場がzeppだったことで、CRYAMYファンの間に衝撃が走りました(Twitter調べ)。おそらくCRYAMY史上、最大規模のステージということで、「どんなライブになるんだろう?!」と多くのファンが思ったことでしょう。
とはいえ、急すぎることと、平日の16:30というかなり鬼畜な出演時間だったことから、行けるファンはほとんどおらず。かなりアウェーな空間でのライブとなることは確実でした。
ピンチヒッターとしての出演が決まったという情報を見て、イベントの詳細を確認すると、オープニングアクトにシンガーズハイの文字を発見。CRYAMYと同じく、下北沢の小箱を中心に活動しているバンドだったので「お!シンガーズハイもいるじゃん!」という気持ち。「シンガーズハイのファンなら、CRYAMYのことも知っているだろう」と妙な安心感もありつつ。
シンガーズハイは2回ほどライブを見たことがある程度で、詳しくはありませんが、気になり続けているバンドだったので、zeppの大きなステージでどんなライブをするのか、とても興味がありました。
できるだけ良い整理番号を求めて、チケットを譲ってくれる人を探し、なんとか2桁台のチケットを確保。今回ばかりは、急な日程でも対応できる、フリーランスという自分の働き方にガッツポーズでした。月の上旬にできるだけ仕事を進め、3月後半はCRYAMYのライブを追っかけ。24日下北沢でライブ→25日名古屋でライブ→26日予定なし→27日大阪でライブという計画でしたが、まさかのzepp追加により、4回連続でCRYAMYのライブを見ることに。
zeppは仕事などで行けない方も多かったライブだと思いますので、今回は行った気持ちになれるようなライブレポを目指したいと思います。ファン視点の感情をこれでもかというほど詰め込みますので、お付き合いいただけると嬉しいです。
□2.シンガーズハイレポ
セトリ
リハ
1.僕だけの為の歌
2.明日にはきっと
本編
1.グッドバイ
2.フリーター
3.daybreak
入場~リハーサル
シンガーズハイはオープニングアクトで、整理番号順に入場すると、来場者が入りきる前に演奏がスタートしてしまう時間帯だったため、オープニングアクト目当ての来場者は先に入れる仕組み。
筆者はCRYAMY目当てのため、普通に整理番号順に入場したが、入場待ちの際に、下北沢でよく見かけるシンガーズハイファンが先にぞろぞろと入っていく姿が見え、思わず微笑んでしまった。
いつも下北沢の小箱でライブをしているバンドが、こんなに大きな箱でライブをやる。ファンたちが大好きなバンドの晴れ舞台のようなライブを前に、胸を高鳴らせているのが分かった。この日、シンガーズハイファンとCRYAMYファンは同じ気持ちであり、仲間だったのだと思う。
入場し、筆者は一段床が上がっている後方フロアの最前列ど真ん中を確保。大きな箱であることを実感しやすいよう、あえて前には行かず、広い視界を確保できる場所を選んだ。
入場したときにはオープニングアクト1バンド目のパーカーズが演奏中で、ハッピーな空気に溢れたライブをしていた。楽しい一日の始まりにふさわしいバンドだな、と出演順に納得。
そして、オープニングアクト2バンド目としてシンガーズハイが登場。機材のセッティングに取り掛かっている間、会場のBGMとして流れてきたのはCRYAMYのディスタンス。シンガーズハイのメンバーがステージで準備をしている姿を眺めながら聴くディスタンスには、感慨深いものがあった。zeppに下北の風が吹いている…。
そして、筆者は愛重めのCRYAMYファンのため、大きな箱でディスタンスが鳴っている時点でもう泣きそうだった。デカい場所ってそれだけで心にくるものがある。
感慨に浸っているうちに、シンガーズハイの準備が完了し、リハがスタート。演奏されたのは「僕だけの為の歌」と「明日にはきっと」。リハなので、フロアのお客さんはほとんど着席していたが、下北沢でよく見かけるシンガーズハイファンたちが仲良く並んで立っていて、思いっきり拳をあげる姿に感無量。
後ろから見ていて、ファンたちの背中から愛と楽しさが溢れているのが伝わってきた。シンガーズハイはピンチヒッターではなく、もともと出演が決まっていたため、仲間で予定を合わせて来られたんだろうなと思うと、一人で来た自分がちょっぴり切なかったりもしつつ。来たかったのに来れなかったCRYAMYファンの顔が何人も頭に浮かんでは消え…。
それはさておき、普段小さな箱で見ているバンドが大きい箱でやることって、こんなに嬉しくて、こんなに感動するんだなと思った。シンガーズハイに関しては詳しいわけでもないのに、ファンが幸せそうにしている姿を見るだけでグッときてしまった。バンドって本当に夢がある。
ライブ本編
シンガーズハイ本編、いよいよスタート。
ゴリゴリと楽器を掻き鳴らす姿を見て、「これこれ!下北沢のかっこいいバンドだよ!みんな見て!」という気持ちになった。
そして、グッドバイの「もう嫌いだ」と歌い上げるところで込み上げる涙腺。大きな会場でライブをするバンドや、テレビで流れる音楽ほど、明るいものが多い。だからこそ、「もう嫌いだ」という暗い歌詞が、大きなステージで、たくさんの観客を前に歌われる光景がたまらなく良かった。この歌詞に共感してしまう自分の気持ちを肯定されたような感覚になった。
でも、一番泣きそうになったのは、daybreakの「なんで分かってくれないんだって イラついていつも泣いてるよ」という部分。「なんで」に込められた苦しみが痛いほど伝わって、自分の心の中のどこかにある感情ともリンクして、この感情を表現してくれる曲があってよかったなと思った。
好きなバンドが大きなステージで歌う姿を見るのって、夢を叶えていく姿を見ているようで、ファンはそれが嬉しいんだと、ずっと思っていた。もちろんその感情もあるが、筆者は何よりも、負の感情を表現した音楽が大きなステージで鳴らされていることが嬉しかった。
彼らの曲に共感した自分の負の感情を肯定された気持ち。自分の負の感情ごと大きなステージに連れて行ってくれたような感覚。
多くのファンに囲まれている姿を見るとか、大きなステージで自信満々に歌っている姿を見るとか、そういうのだけじゃなくて、大きなステージで歌うということは、曲に乗せた感情を大きな場所に連れて行くことと同義で、彼らの音楽が多くの人々に認められるということは、その音楽に共感した自分の気持ちが肯定されるということなのだと思った。
負の感情を表現しているシンガーズハイのようなバンドこそ、デカくなって認められてほしい。そうやって、負の感情に押し込められて潰れそうになっている人たちを肯定してほしい、とそんなことを思った。
大箱でライブするシンガーズハイは、今まで見たシンガーズハイのライブの中で一番かっこよかった。「ファンになったのはいつ?」と聞かれれば、筆者は間違いなくこの日だと答えるだろう。
ちなみに、MC、頑張っていて可愛らしかった。衣久星枠という下北沢の小さなイベントでシンガーズハイを見たときには、「緊張すると上手く喋れなくなるので」と言ってほとんどMCをしていなかった。その印象もあり、zeppだとなおさら緊張するだろうし、MCはほぼないだろうと勝手に思っていた。
でも実際は、メンバーに1人ずつ声をかけて、メンバーが喋る機会を作ろうとしていたり、「多くの人に知ってもらいたい」「名前と顔と曲と、ボーカルの声がうるさいということと、ギターが左利きだってことだけ覚えて帰ってください!」などの発言があったり、非常に頑張っていた。衣久星枠からの成長を感じてなんだか保護者みたいな気分になった(笑)
□3.CRYAMYレポ
セトリ
リハ
1.sonic pop
2.Pink
本編
1.ディスタンス
2.マリア
3.月面旅行
4.WASTAR
5.世界
転換~音出し
シンガーズハイが終わり、CRYAMYのバンドセットに転換。フロアを見渡しても、CRYAMYのTシャツやパーカーを身に着けている人がおらず、ファンいないのでは?と思うほどのアウェーっぷり。
開場前に会えたCRYAMYパーカーを来ている男性と、スーツで職場から駆け付けた男性はよく知っているフォロワーさんなので、筆者の他にCRYAMYファンとしてその2人がいることは知っていたが、それでもたった2人。
スーツの男性は、間に2人ほど挟んで、筆者の3席隣にいたので、会場BGMでディスタンスが流れた瞬間に目を見合わせて涙目になったり、シンガーズハイが終わった直後に「かっこよかったな~」と感想を述べあったり、唯一近くにいるCRYAMYファンとしてこまめにコミュニケーションをとっていた(笑)
そうこうしているうちに、CRYAMYメンバーがステージに登場。筆者は3回連続でCRYAMYのライブを見ていての今回だったので、遠い距離で、大きなステージに立っている彼らを見て、なんとも不思議な気持ちになった。
3日前には名古屋の小さな箱の最前列で見ていたし、昨日は大阪で3列目ぐらいで見たのにな…という気持ち。小さな箱で最前列で見た数日後に、同じバンドがzeppでライブをするのを見るなんて経験は、きっとこれが最後だろう。そのギャップにもう心がついていかない。なにこれ現実?
ボーカルのカワノさんがBALLOND'ORのTシャツを着ていて、昨日の大阪でのライブはまさしくBALLOND'ORの企画だったので、大阪から東京まで帰ってきたその足でピンチヒッターとして駆け付けたんだなというかんじがして、そこだけめちゃくちゃ現実味があった。もうほんと、そこぐらいしか現実味がない(笑)
ギターのレイさんはピック入れにフエキの容器を使っていて、いつもライブのときは機材の上に置いてあるのだが、それがzeppでも置かれていたかは見るのを忘れていた。フエキ、君はzeppのステージに立ったのかい…?
(P.S Twitterで検索したら、フエキがいたと言及しているツイートを発見した。フエキ、お前zepp連れて行ってもらえたんか、良かったな(笑))
MOSHIMOファンとして来場していた友人から連絡が来ていたので、この機会にCRYAMYを好きになってくれたらいいなと思い、「カワノさんの色気に注目!」と返信。いや、絶対他に言うべきことあっただろってかんじだが、もうこの時点で頭がバグっている。もうすぐzeppで演奏するCRYAMYを見れるなんて、パニックにもなるしバグりもする。まともなことなんて言えたもんじゃない。友人から「はだけてるね」と返信が来たので、「いつも^^」と返信しておきました。なんだこのやりとり(笑)
メンバーそれぞれが音の調子を確かめ、カワノさんは「歪ませます~」「音デカいですか?」等のやりとりを音響さんとしながら調整。カワノさんのギターの音が一音鳴ったとき、本当にCRYAMYがzeppでやるんだなという実感が湧き、うわぁ~という気持ち。視界の端に、同じくうわぁ~となっているスーツの男性の姿が映って、ここまでくると、ガチファンの反応は大体同じなんだなと思った(笑)
笑っているかどうかはわかるけど、細かな表情までは見えない、というくらいの距離からステージを見ていたが、この時点でそれほど緊張しているようには見えなかった。いつものCRYAMYというかんじ。ドラムの大森さんが肩の柔軟みたいなのをしているのが目に入ったときは、いよいよ始まるんだなというかんじがして、こっちが緊張した(笑)
zeppのステージは広いので、バンドによって使い方が色々なのだが、CRYAMYはわりと真ん中にキュッと集合したかたちで、スペースを狭めに使っている印象だった。カワノさんを筆頭に、身体も細身だし、なんかほんとコンパクトなバンドだなぁとか思いながら見ていた。大迫力のライブをやるバンドなのにコンパクト。この時点で大好きである。
あと10分くらいあるということを確認し、リハーサルとして曲をやる流れに。カワノさんがベースの高橋さんを手招きし、大森さんの元にメンバーが集合してコソコソ話。筆者は、フロアから背を向けてメンバーだけで話している姿を見るのが好きなので、zeppでこれが見れたぞ!ヤッタァ!という気持ち。
背を向けてコソコソしている姿、ほっこりするので、いつかこの姿をステッカーにしてほしい。これファン同士で話していて「めっちゃ欲しい!」とかなり共感を得られたので需要はあるはず(笑)
リハーサル
メンバー4人によるコソコソ話が終わり、それぞれが持ち場へ戻っていくと、カワノさんが「本編でやる2曲目を変えます。ので、今その2曲目をやります。」とスタッフさんに伝えるようにマイクで話し、リハーサルスタート。
リハ1曲目はsonic pop。この曲は轟音から始まるので、まさにCRYAMYというかんじ。sonic popはやばい。かっこよすぎるでしょ。演奏しながら「〇〇の音をあげてください」と音響さんに指示していたのも良いかんじだった。筆者は音楽に関して素人なので、指示しているのを見ると、プロっぽくてかっこいい!とすぐ思ってしまう(笑)
「あとワンフレーズぐらいですか?あと5分ありますか?」とカワノさんが確認し、2曲目はPink。どちらもサビだけとかじゃなく、がっつりやってくれたのが嬉しかった。Pinkは初期曲なので、思い入れのある人にとってはたまらなかったはず。もちろん筆者もPinkは大好きな曲だ。
リハを2曲やり、レイさんがマイクを通して音響さんと会話。ほかのメンバーの音の調整も済んでいることを確認すると、「やりやすいです、ありがとうございます」とカワノさんがマイクを通してスタッフさんに伝え、調整が終了。そしてメンバーが一旦退場した。
CRYAMYはオープニングアクトではなく、本編のトッパーだったので、CRYAMYの前にMOSHIMOのメンバーがステージに登場し、イベントの開幕を宣言。女性ボーカルの方がとても明るくて、ステージが光って見えた。筆者は暗いバンドばかり見ているので、MOSHIMOの明るさに圧倒されたというか、こういうバンドがフェスを主催するんだな~と納得。
KALMAの出演がキャンセルになったことと、ピンチヒッター・CRYAMYの紹介をして、MOSHIMOメンバーが袖に戻った。いよいよ、CRYAMYの登場。
本編
CRYAMYのライブは楽器隊が先に入って、レイさんがギターを掻き鳴らしている間にカワノさんが後から登場するパターンも多いが、今回は全員同じタイミングでステージに登場した。
大森さんがドラム、レイさんがギター、高橋さんがベース、カワノさんがギター&ボーカル。
運命の1曲目は、ディスタンス。会場のBGMで流れただけで目が潤んだのに、本編の1曲目がディタンスなんて、そんなのもう感極まらないわけがない。ディスタンスは筆者がCRYAMYと出会った曲である。この曲で出会った人は、筆者以外にもかなりいるはずだ。この日の1曲目がディスタンスであることがただただ幸せだった。
「換気扇の下 嫌がる煙」「乾いた部屋の狭いベッド」「小さな私の世界だった」。ディスタンスは身近で狭くて小さな世界を表現する言葉が多い。zeppの大きなステージが、ディスタンスの世界観の狭さを際立たせて、それがまた最高だった。狭い世界を歌った曲が、馬鹿みたいにデカい空間で鳴らされている。心が震えた。
そして、「生まれてきて良かったなんて思ったことはないんじゃないかな」。あの空間にはCRYAMYに初めて出会う人も多かっただろうが、そういう人たちが、この曲からCRYAMYに出会ってくれたことが嬉しかった。響かない人には響かないだろうが、響く人にはこの1曲で響くはずだ。
この歌詞に惹かれてしまう人が、一人でも多くCRYAMYに出会えたならいい。ちなみに、拳をあげている人がまばらに居て、ファンそこにいるのね、と分かって嬉しかった。いるじゃん!少ないけど!(笑)
2曲目はマリア。聴き込みすぎて、冒頭のワンフレーズでマリアだと悟り、愛が溢れた。もともとsonic popだったが、直前に曲を変えてマリアになったようだ。ナイス判断すぎる。マリアはまだCDの出ていない新曲で、デモを聴くかライブに足を運ぶしか、聴く手段がない。この曲は筆者が今一番好きな曲で、壮大なイメージもあったので、絶対にzeppの大きな空間で聴きたかった。
CRYAMYに出会ったきっかけの曲であるディスタンスから始まり、2曲目で最新の最強曲であるマリア。もう、もう十分である。え、まだ続くの?豪華すぎない?キャパオーバーですが?
マリアは新曲なので、サビがどこかを知っているのは、あの会場に5人くらいしかいなかったのではないかと思うのだが、2,3回目のサビではおそらくファンではない人も、拳をあげていた。MOSHIFESの来場者たちは、音楽の受け入れ方が素敵で、嬉しくなった。
2曲目が終わると、カワノさんのMCが入る。
「急に出ることが決まって、やれますよということで。こっちとしてはやるしかないかなと。頑張ります。」というような内容の話をして、「長いので座りましょうか。立ちたい人は立ってもいいですけど。」と提案。一斉に座り出すフロア。
(えっ、座る流れなの?どういう意図なんだカワノさん!)と筆者パニック。(フェスだしあんまりMCしないと思ってたけど、長いMCするのかな。長いMC、初見の人からしたら耐性ないだろうし、楽に聞いてもらおうってことで座らせたいのかな、そういうことかなるほど!)と高速で考察を組み立て、筆者も着席。
ところが、始まったのは月面旅行の演奏。MCじゃないんか~~~~い!(笑)となり、反射で立つ筆者。反射とは言いつつ、視界の端にスーツの男性がずっと立っているのが目に入っていたので、一人じゃないという自信があってのことだったと自負している。彼がいなければ筆者はおそらく座ったままだっただろうし、前方の席であれば後ろの様子が見えないので、なおさら座るしかなかっただろう。
ほとんどの人が座っている中、一人で立ってノリノリになるのは、ちょっとハードルが高い。席によって精神的な立ちやすさが違っただろうから、立っているからガチとか、立っていないからにわかとか、そういう判断をするのは間違いであるということだけ特筆しておきたい。座るしかなかったガチの人も絶対にいる(筆者調べ)。
月面旅行は気分が落ちたときに、いつも寄り添ってくれる曲だ。今日はまさにCRYAMYの最強曲を集めたセトリなんだなと思った。自分を日常的に救ってくれている曲をzeppの大きい空間で聴くのはなかなかにやばい。zeppの包み込んでくるような音響が、月面旅行に非常に合っていた。
そして何より、景色がやばかった。ほとんどの人が座っていて、立っているのは5人とかそのレベルの人数である。筆者は段の最前列だったので、高さがちょうどステージと同じくらいの感覚があり、カワノさんと目線の高さが同じだった。筆者はど真ん中に立っていたから、カワノさんの立ち位置とも同じである。距離は遠いが、真正面にカワノさんが立っている。
そして、視界を遮るものは何一つ無かった。カワノさんと筆者の間にはたくさんの人が居るのに、座っているものだから、視界を遮ることはなく、ただ存在感だけがあった。数えるほどの、わずかなCRYAMYファンだけで、CRYAMYを独り占めしたような感覚になった。
今後またzepp規模のステージでCRYAMYがライブをやることはあっても、これほどまでのアウェー感は生まれないだろうし、数人しか立っていないという状況にもなり得ないだろう。つまり、このときの感覚は、まさにこの場にいた数人だけのものだ。この状態で「後は追わせてね」と歌われるのは、強烈である。
月面旅行の後にカワノさんのMCが入る。
「僕らのお客さんって…その…なんか過保護なんですよね。今日アウェーなので心配です、みたいな連絡がきてて。僕らよりお客さんの方が緊張してると思うんですよね」と言い、軽く笑いながら、フロアに目を向けて「ちょっと和んだ?」と一言。
この「ちょっと和んだ?」って言葉、文脈的に、緊張しているCRYAMYファンに向けて言ったように思えるが、だとしたら素敵すぎる。zeppの大きいステージから、わずか数人しか来ていないファンに向かって発言してくるのは、さすがにファン思いすぎる。
いや、CRYAMYがめちゃくちゃファン思いなバンドだってことは知ってる!知ってるけども!zeppの大舞台、かっこいいこと言ったらかっこよく決まるでしょうに、どこまでもCRYAMYである。数人しか立っていない状況を見て、緊張しているだろうなという気遣いなのかしら。いや~~~好きだわ、筆者、CRYAMYのこと好きすぎてるわ。
カワノさんのMCが続く。
「フェスっていうと、みんなでひとつになりましょう~とか、あるのかもしれないけど、僕はそうは思っていません。あ、これ批判じゃないですよ、批判じゃないんですけどね。あとは、僕たちと一対一で向き合いましょう、とか言う人もいますよね。でも、まあ、あれは嘘だわなぁ。」
「僕はその心を一つにとかも願ってないし、僕たちと一対一で向き合いましょうとも思ってないです。願ってない、思ってないけど、一個だけね、一個だけ、できることがあるとしたら。俺ら後2曲頑張るから、できたら俺と一つになっていただきたいなと思ってます。」
「周りの人と一つになる必要はないし、俺と向き合う必要もないけれども、俺と一つになって帰っていただきたいなと思ってます。短い時間でしたけど、ありがとうございました。CRYAMYでした。」
「俺と一つに」という発言、筆者は何度もライブに行っているが、行った中では初めて聞いたMCだった。1つになるというのがゼロ距離を指しているのだとしたら、テリトリアルの「見えない奥の隙間まで届いてほしい」的なことなのかなと思ったり。筆者はMCの意図を掴み切れていない気がするので、この部分はあまり真に受けず、それぞれで解釈してほしい。
「俺は今からめっちゃ愛してるよって歌うけどね、別にね、愛のこととか、恋のこととか、そういうことを歌うわけじゃないから。愛って難しいね。愛って難しいんですよ。愛って難しいけど、一つだけ断言できるのはね、人が人に愛されるのはこれは正しいことだなと思うんですね。そういう曲です。ご清聴よろしくお願いします。WASTAR。」と言って始まったのは4曲目、WASTAR。
この大舞台で5曲中2曲が新曲って強い。そのぐらい新曲に自信があるし、ライブパフォーマンスとしても仕上がっているということなのだろう。筆者としても、昨日WASTARのライブ映像のショートバージョンが公開されたこともあって、WASTARへの思い入れが増しているタイミングだった。より壮大に見えたWASTARがあまりにも美しかった。
カワノさんの両手を大きく広げる仕草を、zeppという大きなステージで見れたことも嬉しかった。
WASTARを演奏し終えると、「俺が守ってやる、俺が救ってやる、俺が抱きしめてやる」と叫んで、ラスト5曲目は世界。
立ちにくい配置だった席のCRYAMYファンも、世界は立つしかない!と思ったのか、前方で立ち上がる人たちが見えた。MOSHIMOのグッズを身に着けた人たち、おそらくCRYAMYファンではないだろうが、同じく立ち上がっていた人が何人かいて、それも嬉しかった。あの状況で立ち上がるって、けっこう緊張するので、CRYAMYの音楽が本当に響いたんだろうなと思う。
zeppの大舞台でぶち上げられる「世界」は圧倒的だった。そして、CRYAMYの音楽が日の目を見てほしいという個人的な念願も叶ったような、そんな気持ちだった。何度も叫ばれる「あなたが」に、全力で拳をあげた。
CRYAMYに救われていること、CRYAMYに守られていること、CRYAMYを応援していること、CRYAMYを大好きなこと、あなたにも幸せになってほしいと思っていること、この場を見届けたファンが数人だけれども、しっかりと居るということ。全部、全部、この拳で伝わればいいと思った。ステージからその拳は見えただろうか。この溢れる想いをどう処理すればいいのか、分からない。
「世界」には、中盤に大きな転調がある。歌声が終わり、ギターのノイズだけになり、その音も段々と絞られていく。ファンは、世界の見せ場がここからだということを知っているが、初見であれば、曲が終わったと思う人もいるだろう。転調が始まる前に、終わったと思って拍手とかされやしないだろうかとヒヤヒヤした。また過保護だと言われてしまいそうだが(笑)
そんな筆者の心配をよそに、拍手されることもなく、「街を照らす ボロいパチンコの灯りが」とカワノさんが歌い始める。転調が滞りなく進んだことに安心する。世界が大切な曲すぎて、思わず過保護になってしまった(笑)
「誰にも愛されなくたって あなたが生きていてほしい」
この歌詞がzeppで響き渡ったことが、ただただ誇らしい。CRYAMYの音楽は、誰もわかってくれなかった心の隙間に入り込んできてくれる。心のすぐそば、あるいは心そのものになってくれる、とても近い存在としての音楽だ。だからこそ、小箱で見たいと思うかもしれない。
だが、CRYAMYの音楽は、身近さとは真逆の壮大さもまた、持ち合わせている。その壮大さが最大限に発揮されるのは大箱である。初めてのzeppだったが、似合いすぎていた。ステージの大きさに負けない、もはやステージを超えていくぐらいの迫力があった。そして、CRYAMYの世界観は、空間を飲むことができる類のものだ。最高の音響であったことも相まって、完全にあの空間を飲み込んでいた。
世界を演奏し終え、拍手の中、メンバーが退場。カワノさんは「この後も楽しんでください~」と言っていた。申し訳ないが、楽しむ余裕などない。もうお腹いっぱいである。
カワノさんがこの日のインスタ日記で、「俺はライブハウスという巣に戻るよ」と書いていたが、そう言わず、またデカいところでもライブしてほしいと思う。ライブハウスのツアーと、ホールツアーとやるようなバンドもいるし、CRYAMYもそうなったらいいなとか、個人的には思っている。小箱も大箱もどっちも見たい。
この日のライブは、会場BGMでディスタンスが流れただけでこんなに泣きそうになるんだと、自分のCRYAMYに対する思い入れの強さが、自分が思っていた以上だったことを痛感させられたり、数人のファンだけが立っていて、自分たちだけに歌われているような感覚になったり、アウェーな中で全力で拳をあげたり、新曲の壮大さが味わえたり、CRYAMYが大箱でライブをしたらどうなるのかが分かったり、いろいろと特別だった。
ライブに行ったが、妙に実感がない。夢を見ていたような気分である。ピンチヒッターではなく、自主企画で、もっとたっぷりの時間で演奏していたら、もっと現実味があったのだろうか。その日が来たら、答え合わせをしたいものだ。
直後のCRYAMYファンの様子
席の近かったスーツの男性と一緒にフロアを出て、バーカウンターの付近でライブの感想をひたすらに喋った。すると、見覚えのある男性が登場。CRYAMYファンみんなのお兄さんみたいな存在の人である(これは筆者の主観)。来られないと言っていたが、CRYAMYの時間だけ、仕事を抜けて駆け付けたようである。もう、過保護なんだから(笑)(笑)
この日は女性ファンが見当たらず、抱き合いながら泣いたりできるような人がいなかったため、筆者は少し寂しかったのだが、この男性ファン2人、完全にCRYAMYに対する慈愛の目をしていて最高だった。べちゃべちゃに号泣したり、騒いだりこそしないけれど、目を見ればわかる。この人たちがCRYAMYを見れて良かったなと心の底から思った。
仕事を抜けて駆け付けてきたという男性に、「こんなライブを見た後に仕事なんてできるんですか?」と声をかけると、彼は「できない、できない(笑)」と笑っていた。しかしやらなければならないので、慈愛の目をしたまま、職場に戻って行った。これが大人である(笑)
この後も、別のファンと合流して1時間ほど語り尽くし(どんだけ喋るんだ)、なんとか気持ちが落ち着いたので帰ることにした。他のバンドも気になってはいたのだが、この余韻のまま、帰りたくなってしまった。
帰った後、一晩かけてこの文章を書いた。現実味はないが、文章にして残しておくと、なんか現実にあったような気がしてくる。夢か幻か現実か。筆者にはもう、わからない。
□4.まとめ
ここまで読んでいただきありがとうございました。ものすごく長文でしたよね(笑)
開場までの様子、機材の準備、リハ、本番、ライブ後の会話、など、これまでの筆者のライブレポとは比べ物にならないほど、事細かなレポートを書きました。「なんだこの無駄話(笑)」と思われた箇所もあったかもしれませんが、こういう話も入れた方が臨場感が出るかな、と考えた結果です(笑)行けなかった人の多かったライブだからこそ、行った気分になれるようなレポになっていれば嬉しいです。
このレポを題材にして、行っていないファン同士で会ったときに、まるで行ったかのような会話を繰り広げてほしいな、と思ったり(笑)行けなかった悔しさが少しでも晴れますように。
最後に、このレポを書くためにMCの内容や順番を一緒に思い出してくれたフォロワーさんにspecial thanks.筆者ひとりだけの記憶力では、ここまで詳細なレポは書けませんでした。ありがとう。
◎シンガーズハイ&CRYAMY好き同士、よかったら繋がりましょう♪
ライターさん…!と言われることがあるのですが、普通にただのファンなので、タメでめちゃくちゃ気軽に絡んでください。そしてライブハウスで語り合える友達になれると、とても嬉しいです!
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