キュウソネコカミと今を楽しむ【音楽文】

「ライブの魅力を中心に」という副題をつけて、音楽文に投稿していた文章です。当時はこのブログも開設しておらず、人に読んでもらうことを前提にして書いた文章はこれが初めて。キュウソネコカミを全力で追いかけていた頃の処女作です。投稿日は2018年12月31日。

私にとって音楽は自分と向き合うためのものだった。悩んだとき、行き詰まったときに音楽を聴き、歌詞に支えられ、次の一歩を踏み出すことができた。いつも、ソロで活動するシンガーソングライターを好きになった。一人の人間の考え方や感性が染み込むかんじが好きだった。

だが、今の私はバンドが好きだ。
それは、私にとって音楽が楽しむためのものになったからだ。家でしっとりと歌詞を読み込みながら聴くのではなく、フェスやライブで他人と笑いながら踊りながら聴くものになった。

この変化は、社会人になったという私自身の変化によるものだと思う。学生時代は、自分と向き合わせてくれる、そういう音楽が好きだった。自分がどういう性格で、どういう職業に向いているのか、そういったことをずっと考えていた。

今年、私は社会人になった。自分が何を生業として生きていくのか、どんな毎日を過ごしていくのか、学生時代の不透明だった頃と比べ、すごく具体的にイメージがつくようになった。今、必要なのはいかに自分と向き合うかではなく、平日の仕事を一生懸命頑張ること、そして休日をいかに楽しむか、だ。

そうなったとき、日々のいろいろなことを忘れ、思いっきり楽しめる場としてフェス、そしてライブハウスを見つけた。聴く音楽もキャッチーな曲や、クスッと笑えるような歌詞のものを好むようになった。

音楽は、私が思っていたよりも楽しいものだった。そんな今の私にとって、一番楽しい音楽を鳴らしているのがキュウソネコカミである。

ラジオだったか、「ライブではキュウソは負けない」と言ったボーカルのセイヤさんの言葉が好きだ。キュウソのライブは本当にすごい。私がキュウソにハマったのもフェスでライブを見たのがきっかけだ。初めてでも、知らない曲でも関係なく、あれほどまでに楽しめたライブはキュウソが初めてだった。

キュウソの音楽は人を踊らせる。
もみくちゃになっても、倒れそうになっても、それでも踊る。それが最高に楽しい。曲によっては振り付けがあるのも楽しい。それも、初見で真似できるような簡単なものなので、誰も置いていかないのがキュウソらしくて大好きだ。

また、全員が楽しめるライブにするための工夫があるのも魅力だ。キュウソのワンマンではダイブはセイヤさん以外禁止である。ダイブが禁止されたことで、上から足が降ってくる恐怖を感じることなく思いっきり飛び跳ねられる。

それに、セイヤさんの方からダイブをしてきてくれる。観客の上を歩くクラウドウォークはキュウソのライブの特徴の一つだが、セイヤさんの足を支え、自分の真上でセイヤさんが歌っているのを見たときは、本当に感動した。これこそファンと一緒につくるライブだ。

また、キュウソのワンマンではサークルではなく盆踊りの輪が発生する。そして、ウォールオブデスは開きすぎず、1mくらいで、とセイヤさんから声かけがある。ロックバンドのライブらしい楽しみ方をしながらも、本当に危険なことは代替案を出し、安全にぶち上がれるようになっている。だから全員が全力を出し切り、笑顔で帰れる。

そして、キュウソのライブはめちゃくちゃエモい。面白い歌詞が多いし、コスプレをして登場する等、パフォーマンスも面白い。それゆえ、おふざけ系か?と思われることもあるかもしれないが、彼らは至って真面目で、本気だ。

「売れたい」「上へ行きたい」ということをはっきりと明言し、そこに向かってひたむきに突き進む姿は最高にかっこよくて、応援したくなる。ライブはそんなキュウソを直接応援しに行ける場なので、めちゃくちゃ楽しそうに見えて、実はめちゃくちゃエモいのだ。

また、セイヤさんはいつか終わりがくるということをストレートに言う。活動休止する予定だとかそういう話では一切ないけれど、例えばいつ事故や災害に巻き込まれるか分からないし、ファンだっていつまでファンでいられるか分からない。だから会えるときに会いにきてほしい、と言う。

いつでもライブに行けると錯覚しがちだが、そうではないということに気づいたとき、一回一回のライブが輝きはじめる。すべてが一回きりで、特別なのだ。

もしかしたら、人生で路頭に迷うようなことがあったとき、私はまたシンガーソングライター好きに戻るのかもしれない。今の好みとこれからの好みが一緒である保障はない。だが、先はわからないから楽しみだ。ただ、今、心の底からキュウソが好きだから、できる限り会いに行く。

今の彼らに今の私で会いに行く。今の彼らを今の私で支えたい。そしてもっともっと上へ駆け上がってほしい。多くの人の目の前で輝いてほしい。

あとがき

ここまで読んでいただき、ありがとうございました。このあとがきを書いているのは、2022年4月4日です。キュウソネコカミの音楽文を投稿したのは2018年12月31日。かなりの時が過ぎました。

私は2018年から一緒に暮らしていた彼と結婚し、キュウソを聴きながら踏ん張ってきた3年間の公務員生活に幕を閉じ、現在はフリーランスの物書きになりました。

「土日にいかに楽しむか」という縛りがなくなったことで、キュウソの音楽を求めなくなり、今は別のバンドを全力で追いかけています。キュウソとは対照的な、暗くて苦しいバンドです。私は日常を忘れるための音楽ではなく、自分と向き合うための音楽に戻ってきたのだと思います。

もしかしたら、退職したことで路頭に迷っている部分も、自分の中にあるのかもしれません。不透明な学生時代に戻ったような感覚があります。

でも、相変わらずロックバンドが大好きで、ロックバンドを好きにさせてくれたのは、他の誰でもないキュウソネコカミで。彼らを追いかけていたときの記憶はいつまで経っても色褪せなくて。

あのときキュウソネコカミを追いかけてよかったと思います。この文章をもって、キュウソネコカミに最大の感謝を。